6.余話

6.余話


肝炎に罹ったばかりの頃は、他の病気と違い痛みが無いと云うだけでも戸惑う物です。

肝炎になったばかりの方は今までの各項を読んでも訳が解らないかも知れません。

出来るだけ肝炎になったばかりの頃を思い出し、当時見聞した事や体験した事を記します。

6.1 経過

始め胃の検査を受けた時、肝臓が悪い(GPT 67)と言われ、薬を貰いましたが、飲み屋で俺は肝臓の薬を貰っているからいくら飲んでも大丈夫と本気で自慢していました。

其れくらい自覚症状が無かったのです。

ところが集団検診でGPTが507あるから医師に診てもらう様にとの通知を受け、会社近くの医院で診てもらうと即入院と云われ、唖然としました。

入浴も駄目、絶対安静などさんざん脅され、そこからの紹介で日赤へ入院の為の検査通いになりました。

とにかく痛みが無いのだから、殆どの人は似た様な経過をたどると思います。

入院しても治らないとか、長く入院していると本当に病人の様になるとか(本当の病人に為っていたのですが、外目には普通でした)、いろいろ聞いたりしている内に、GPTが正常値になり入院は取り止め全快祝いを配ったりして、あの大騒ぎは何だったのと笑い話になりました。

知人の一人がお子さんが肝臓病とのことで、そんなあまいものでは無いと忠告してくれたのですが、変な事を言う人だと完全無視でした。

その後五か月ほど正常値が続き完治したと安心していたところ今度はほとんど動けなくなりGPTも857に為りました。

家で寝たきり、見舞いに来てくれた人の声が聞こえても会う事すらしんどくて断ってもらいました。起きるのは食事と便所に行く時だけで、少し元気になったら今度は入院しようと決心しました。

しかし暫くすると、またGPTが正常値に為ったので、前述の医院が会社に近いことも有り通院する事に決めました。

それから受けた治療は、注射(内容不明)、点滴(内容不明)、ホルモン錠、アレルギーの注射、小柴胡湯で、途中から自宅近くの医院に変え、小柴胡湯、ミノファーゲンC、肝エキス、などの治療を受けました。

結果は前項の表に示す通りです。民間治療もしましたが、何もしない時の方が一時的に良かったりしてどれも決め手にはなりませんでした。初期に入院しなかったからだとも言われましたが、今からみるとすべて関係無かったと思います。

特に始めの間は、B型肝炎のウイルスがマイナスだった事も有り、会社近くの医院では、アレルギーの疑いを持っていて、その薬を投与されたりしました。調子の良い時は普通と変りませんが悪い時はじっとしていてもしんどく、お得意さんが事務所へ来ても一言も口をきかなかったり、点滴の帰りにあまり広くも無い道を横断できず電信柱にしがみ付いていた事を思い出します。丁度胃の悪い人がすごく痛い時は屈み込む程でも、普通は健康な人と変らないような物と思います。

私も調子の良い時は当時市販されていた一般向けの書物は無論、近くの医大へ行って学生や医師向けの書物なども読み漁りました。また肝炎になった人の話を聞きました。当時はインターネットも無く情報不足だったのです。重い人は肝炎に罹り意識を失い気がついたら1週間経っていたとか、好物のうなぎが食べられなくなって病院へ行ったら即入院だったとか聞きましたが、不思議な事に病状が重い人ほど短期間で治癒し慢性化していませんでした。私の様に検査で始めて解った人が慢性化している様でした。

6.2 INF以前の治療法

肝炎になっていろんな西洋医学、漢方、民間療法を受けました。また食べた物や旅行に因る疲れなどとGPTとの関係なども調べ何度もこれこそが正解と思いました。しかし日時が経つとまた悪くなりました。兄は糖尿病ですが何時も何かの民間薬を購入し調子が良いこれで治ったと言っていますが、大体数ヶ月で別の民間薬に代わり、今度は本物だと言っています。B型肝炎で亡くなった父もそうでしたし、肝炎に罹っていた時の私も同様でした。

しかし肝炎とウイルス(A.J.ズッカーマン.C.R.ハワード 著 西岡久寿彌 訳)を読んで、北京市伝染病院の10病棟のうち8病棟までが肝炎に当てられている事、患者がアジヤ地域に多い事を知り、漢方薬も決め手にはならないと考えました。

NHKのテレビで、「西洋医学は目覚しく進歩しているが、まだまだ解らない部分が多くこの部分が

外国では詐欺師の天国と云われていて色んな民間療法がある。

しかしペスト、コレラ、天然痘など西洋医学の進歩とともにその部分が無くなって行く」との事を知りました。

趣味の東洋蘭の本で正体のはっきり解っている蘭のウイルスでも、細菌と違い現在科学ですらお手上げで焼き捨てる以外方法が無い事も知りました。

決めての一つは、B型慢性肝炎患者のGPT値の経時変化図(以後B図といいます)が、別項の私のGPT図と酷似しているのを見た事です。始め大きな変化(300以上から略正常値まで)を繰り返しその後正常値から100前後の間で落ち着き、月日が経ってまた悪くなり今度は肝硬変に進むと云うものです。この落ち着いている時、特に正常値の時にたまたま飲んでいた薬が効いた様に錯覚していただけと云う事が判りました。なにも飲まなくても一時的に正常値になるのです。

特に医療関係者用の本を読むと、非常に多くの研究者達が信じられないほど膨大な研究結果の発表をしているのが判ります。しかし調べるほどウイルスに対する治療法が無い事がはっきりしてやけ気味に為りました。そう云えば風邪引きに直接効く薬もないではないかと考え、何々が効くと教えてくれた人にも、何も知らないくせにと物凄く反発しました。始めのうちはどんな事でも知りたかったのに、5年ぐらい経つと一寸でも肝臓に良いと聞くと自分でも可笑しいほど猛烈にその相手を攻撃しました。この傾向は相手が慢性肝炎で無かった場合特に激しかったと思います。溺れている者に岸の上から藁を投げるような事は止めろとでも云う事でしょうか、それとも1項の大新聞の事が有ったからでしょうか。または、後に述べる様に怒りっぽく為って居たのかも知れません。

結局、漢方も西洋医学もウイルスに対しては無力でどうしようもないと諦め、「慢性肝炎で死んだ人はいない、癌になると云っても確率の問題で、何処も悪く無い人が突然なる場合だってある」と云う有名な肝臓専門の先生の話や、糖尿病と違い好きな物を腹一杯食べられる点でも有りがたいその上周りが病人扱いしてくれるので楽できる、これからは勝手気侭に生きようと考えました。その為か子供達に「勝手かんぞう」とあだ名をつけられました。

同じ様な人が居るらしく植木屋に聞いたのですが、彼の近所に肝臓の悪い人が居て、少し働くと疲れたと云い畑仕事は奥さん任せですが、当人は川で流木を拾って来て、夏の暑いさなかでも汗を流しながら一日中磨いているそうです。知らない人には理解出来ない事ですが、私には良く解りました。自分の好きな事をしている時はそれ程疲れないのです。

話を戻しますが、別項で述べた断食道場の件や、前述の先生が、「治療の邪魔をしないのも治療だ」と述べているのを知り、民間療法や漢方薬は無論医院から貰う薬も捨て禁酒以外は何もしませんでしたが、今になってみると全てB図の通りだったから禁酒すら意味が無かったのではないかと思っています。失われた10年を取り戻そうと昼間から飲んでいますが年のせいで量が少なく、取り戻す為にはよほど長生きしなければと考えています。

6.3 B図の説明

スキャナーが無い為、B図を載せる事が出来ませんが、図の説明の一部を記載します。

「~さらに一部の症例では、このままHBs抗原は消失し、HBs抗体陽性となり、臨床的にも落ち着いた状態になる。しかし、大部分の症例では再びHBs抗原が血中に出現し、急増した後に急性増悪を繰り返して、肝硬変へと進展する。~」詳しくは下記をご覧下さい。

(週刊醫學のあゆみ 第118巻・第9号 第5土曜特集 ウイルス肝炎とその周辺 医歯薬出版株式会社 昭和56年8月29日 p.623 慢性肝炎の臨床像 長島秀夫 山田剛太郎)

6.4 INFの投与をうけた理由

落ち着いていた期間が過ぎた後、B図と同じ様にGPTの値が上がり始めました。あまり高いのは良くないとの事でミノファーゲンC、肝エキス、などの治療を受けましたが、B図と同じ線を辿り上下を繰り返しながら右肩上がりになりました。このまま高い値が続くとB図との酷似性から肝硬変になると恐れていたところ、当時かかっていた医院の先生が、INFの治療に保険が適用される様になったと教えてくれたので、迷う事無く投与を受けました。

おかしな話ですが私の未来をほぼ正確に示していたB図を見ていなければ、入院の決断が着かなかったと思います。INFの効果については友人が駄目でしたし、副作用については、子供の上司からその激しさを聞いていました。その上司も効果が無かったので、図を見ていなければ例によって猛反発していたと思います。

私はどうせ駄目だからと半ばやけ気味で投与を受けたのです。当時二つの会社を経営していたのですが、時間的に余裕が無く何とか一つだけ譲ることが出来、少しですが身軽になって悪い結果に備えました。

そして先生に日赤とA医大のどちらに紹介状を書きましょうかと聞かれたので、食事が良いと云う理由だけでA医大にした事から見ても、やけ気味だった事が明白です。それが偶然治療の方法が私のC型肝炎に合い、入院の順番待ちの期間が長かった事も、治療を始めた時が、GPT値が低い時と合致すると云う絶好のタイミングとなり、長年悩んだ慢性肝炎が治癒しました。

6.5 INFの良く効く人

私の見聞した所では一般に言われていることと随分違います。

一番目はGPTの最高値が高い事です。私の周りとかネットで知った範囲では、GPTが数千まで上がった人は慢性化し難い上に慢性化してもINFで簡単に治癒し、五百以上の人は治癒易く、五百以下の人は治りが悪い様です。

肝炎になった後でしたが、タクシーに乗るとたまたま運転していたのが知人でした。肝炎のため病院へ検査に行くのだというと彼は自分も慢性肝炎だと言い、私のGPTが857まで上がったと云うとそれは急性だから治る、自分のは最高で200ぐらいだから駄目だと断言しました。其の時私は発病以来一年経っていて慢性肝炎でしたので一笑に付しましたが、同じ様な事を別の慢性肝炎の人も云われた事がありますので、若しかしたら肝炎患者の間では経験上結構信じられている事かも知れません。

この肝炎患者間の話と云うのは、専門家から見れば噴飯ものと思いますが、真偽は別として結構納得させられるのも多いと思います。但し相手が慢性肝炎の患者で無かった場合は先に述べた様にどんな話を聞いても納得どころか反発しました。

二番目にINFの投与を受け始めたときのGPTが正常値に近いほど低い事です。是は叩くべきウイルスの量が極めて少ないと考えられるので、絶滅しやすく又副作用も少ないと考えられます。戦争も喧嘩も相手が弱いほど楽に勝てて此方の受ける損害が少ない筈です。私はその極端な例として、健康な人がINFの投与を受けたとき副作用が出るかどうか知りたく思っています。

三番目にあまり他の薬を飲んでいない事だと思います。薬を飲んでいない人ほど薬が良く効くと云うのは定説です。前述の「治療の邪魔をしないのも治療だ」とか、「書経」の太甲編にも、「天の作(な)せるわざわひは、猶(な)ほ違(さ)くべし。自ら作せるわざわひは、活(い)くべからず。」(私の一番好きな言葉です。)と有りますが、わざわざ余計なことをして余計に悪くなる場合も結構多いのです。

所謂民間療法の薬なども本当に効くのなら保険が適用される筈です。保険が適用されていても必ず効くとは云えないのに、適用されていないのは確実に効かないと云えると思います。

現にINFですら当初投与方法がはっきりしない間は、効果も悪く保険が適用されていなくて、友人が其の時二度も種類を変えて投与を受けましたが無効でした。

6.6 INFによる治療における一番の問題点

それからINFの治療を受けるのに一番問題となるのは入院だと思います。肝炎は一般にそれ以外は健康と云う人でもなり、従って入院経験の無い人が多く非常に戸惑うと思います。

また会社勤めの人にとっても問題です。私は比較的自由の身の上ですがそれでも入院となるといろいろ難儀しました。

私の入院の項を見ても、果たして一ヶ月以上の入院が必要か誰でも疑問を持つと思います。37℃台の熱ぐらい激しく身体を使う仕事は別として誰でも会社へ行くのと違いますか?それも二三日です。現に私は殆ど家から通院していたようなものです。入院と云う事で絶好の骨休みとさぼっていましたが、どうしても出社しなければならなかったとしたら、平常通りの勤務が出来たと思います(平常もずるしているのと違うかと云う疑いを受けそうですが)。通院でO.K.と為るともっと多くの人が気楽にINFを受けることが出来ると思うのですが?。

私が治療を受けたときに較べ九年も経っているのですから、治療法も随分進歩している筈です。今はもっと副作用が少なくなっていると思います。入院が一番の障害になっていてこの為、多くの治る筈の人が苦しんでいると思うと、副作用を出来るだけ少なくする事も治癒率を上げるのと同じくらい重要と思います。

その意味で入院でかなりの日数が必要な肝生検が必須では無くなった事は、素晴らしい事だと思います。肝生検というのは危険も有るらしいのです。私と同時に受けた人ですが担当医が若く、それだからと云う事でもないのでしょうが、肝生検の最中に「危なかった」と呟いたそうです。受けた人が高等学校を卒業したばかりの子供でしたのでつい気を許したのでしょうが、その話を聞いて後から受ける人はびびって居ました。またどこかのホームページで三度も肝生検を受けた人が、医師による技術のあまりの違いに驚き、大きな字で注意を呼びかけていたのを見た事が有ります。

INFが飲み薬になったら、いろいろ考えずに一応試しに飲んでみると思います。例え効果がある人が一割でも何十万と云う人が救われると考えるのは素人の戯言でしょうか?。

またINFが一種類でなく、その投与方法によっても効果が随分違う以上、当然の事として良い結果を得た人の治療法を調べ、そうでない人の場合と御自身で比較検討をすべきだと思います。

医療研究者は、より良い結果を求めて常に色んな方法を試みている筈ですが、患者の方は一度しか機会が無いのですからベストの方法で治療してもらうべきです。随分矛盾した話ですが患者が利己的に為るのは当然です。勿論投与方法まで口出しするのは医者でも無い限り不可能と思いますが、INFの種類や効果ぐらいは病院の待合室で聞き出すべきだと思います。

私自身が食事だけで病院を選んだのにこの様に述べるのは、病院で仲間などと交換した各メーカーの効能書きを見て、INFの種類が幾つも有り、且つ同一のINFでもその投与の方法によって著効率が倍以上違う事を知ったからです。

6.7 入院の勧め。

ふざけている訳では有りません、普通の人が入院の経験をする事はめったに無いと思います。恐らく大部分の人は非常な高齢に為ってからだと思います。入院、それも個室で無い場合、日常の生活では出会う事の無い別世界と言って良いほどの人達との出会いが有ります。

昔から監獄に入ったり、大病をした事の無い人は大成しないと云われていますが、その意味が少しは解ったような気になりました。そして肝炎が治ったらまさに一石二鳥だと思います。そう云う意味でも個室はお勧めでないです。

6.8 INFによる肝炎治癒後

肝炎に罹っている人は怒りっぽいです、肝炎に罹った当初は時々日赤に検査に送りこまれましたが、担当の先生が非常に気短で怒りっぽいので、聞いてみるとやはり慢性肝炎でした。また低気圧で頭痛がします。私などは台風が鳥島辺りまで来ると頭痛で解りましたし、頭痛薬を始終多量に飲んでいました。

似たような事が「日本人の8割は肝臓病」と云う本にも記載されているので一般的にそうであると思います。(当時本屋に並んでいた肝臓と云う文字のある本は全て購入した為、読んだ本の数が多すぎてこの本の題名も不確かです、著者の名前も忘れました。ご存知の方はお教え下さい)

治癒後は頭痛になりません、悪酔いもしなくなりましたしここ数年風邪すら引きません。年に一二度A医大でする追跡検査以外に、医者にかからないので、INFによる治療を勧めてくれた近所のお医者さんは、家族が行く度に御主人はどうしていると聞いてくれるそうですが長い間会っていません。少なくとも妻、子供、孫、会社の人よりは健康です。INFによる治療法がますます改良されて、より多くの人が治癒する事を祈って私の体験記を終えます。

次へ》 《目次に戻る